Windowsストアにアプリを登録する

Windows 8に搭載されているストアアプリ「Windowsストア」には、個人が作成したアプリも登録することができます。ただしそのためには様々な条件をクリアしなければならず、ハードルは高いです。

私は数日前に突然ダメもとでやってみようと思い立ち、悪戦苦闘した結果、何とかWindowsストアにアプリを公開することができました。ここでは、この経験を忘れないうちに書き残しておきたいと思います。

なおここでは、Windowsストアアプリの作成方法については最低限しか説明しません。もしかしたら将来書かせていただく機会があるかもしれませんが、今はまだ私にそれだけの技量があるとは思えません。

また、私はすべての事柄を記録していたわけではなく、多くは記憶に頼っていますので、正確でない箇所(あるいは、抜けている箇所)があるかもしれないことをご了承ください。

ちなみに今回私が登録したアプリは、「Color Converter」という、非常にぬるいツールです。

開発環境を整える

Windowsストアアプリを開発するには、Windows 8とVisual Studio 2012が必要です。まずは、これらをインストールします。

この記事を書いている時点では、MSDNサブスクリプションではこれらが公開されていますが、それ以外では、Windows 8 RTMとVisual Studio Express 2012 for Windows 8を入手するしかないようです。これらの入手先は、「Windows Metro スタイル アプリ開発者向けダウンロード」をご覧ください。

私の場合は、MSDNサブスクリプションから入手したWindows 8 ProとVisual Studio Ultimate 2012をインストールしました。

Windowsストアアプリを作成する

Visual StudioでWindowsストアアプリを作成するために、「Windowsストア」のテンプレートを使ってプロジェクトを新規作成します。「Windowsストア」のテンプレートは、メニューの[新規作成]-[プロジェクト]で表示されるダイアログの左側にあるツリーで[インストール済み]-[テンプレート]-[Visual C#](または、[Visual Basic])-[Windowsストア]にあります。

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Windowsストアアプリの作成方法は、「C# または Visual Basic を使った初めての Metro スタイル アプリの作成」が参考になりますので、初めての方はそちらをご覧ください。

Windowsストア開発者アカウント登録する

Windowsストアにアプリを登録するには、Windowsストア開発者アカウントが必要になります。このアカウントの登録には、現時点では、登録コード(トークン番号)が必要です。(「Windows 8のアプリストアで稼ごう――Microsoftが開発者に呼び掛け - ITmedia ニュース」などでは、個人の登録者は4900円でアカウント登録できると書かれていますが、実際に現在この方法で登録できるか分かりません。)

登録コードは、MSDNサブスクリプション会員であれば、無料で取得できます。また、9月末までは、Application Excellence Lab (AEL)を受講し、アプリがストアに登録できる品質と認められれば、無料で発行されるそうです。

私の場合は、MSDNサブスクリプションで登録コードを取得しました。MSDNサブスクリプションの「アカウント」のトップページに「Windows Store デベロッパー アカウント」という項目がありますので、そこで簡単に取得できます。

登録コード取得後、それを使ってWindowsストア開発者アカウント登録をします。この時、名前、住所、電話番号、メールアドレス、発行者の表示名などを入力する必要があります。ここで入力した情報は後で変更できます。登録時に必要な入力事項について詳しくは、「Windows ストア開発者アカウントの登録」をご覧ください。

なお登録には、たとえ無料であっても、必ずクレジットカードが必要です。小額ですが(数百円)、確認のためにクレジットカードから引き落とされます(この後でもう一度引き落とされますので、結局2回引き落とされました)。後で返金していただけるのだろうとは思いますが、今のところは返金されていません。(どのタイミングでかは忘れてしまいましたが、確認のために、いくら引き落とされたかの入力を促される場面がありました。)

Windowsストア開発者アカウント登録は、Visual Studioのメニュー[プロジェクト]-[ストア]-[開発者ライセンスの取得]でもできそうな感じがしますが、私は試していませんので、分かりません。

登録が完了すると、「デベロッパー センター - Metro スタイル アプリ」の「ダッシュボード」からアプリの提出が可能になります。この「ダッシュボード」のページは、Visual Studioのメニュー[プロジェクト]-[ストア]-[開発者アカウントを開く]で開くこともできます。

アプリを提出する過程を確認する

アプリを提出するには、ダッシュボードから「アプリの提出」を選択します。

「アプリを提出する」ページでは、アプリを提出するまでの工程がリスト表示されています。これを上から順番に完了させていくと、最終的にアプリを提出できるようになります。

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アプリ提出までの工程は、以下の通りです。

  1. アプリの名前(2分)
    アプリには一意の名前を付けてください。
  2. 販売の詳しい情報(5分)
    プッシュ通知と Live サービスを構成してアプリ内販売を定義します。
  3. 高度な機能(5分)
    アプリには一意の名前を付けてください。
  4. 年齢区分と評価証明書(5分)
    アプリの対象者について説明し、評価証明書をアップロードします。
  5. 暗号化(5分)
    アプリで暗号化を使うかどうかを宣言して、パッケージのアップロードを有効にします。
  6. パッケージ(30分)
    Windows ストアにアプリをアップロードします。このステップを使用できるようにするには、暗号化ページを完了します。
  7. 説明(30分)
    顧客にアプリの動作を簡単に説明します。
  8. 審査担当者へのコメント(2分)
    アプリの審査担当者向けにこのリリースに関するコメントを追加します。

なおこれらの工程の詳しい説明が「アプリの提出用チェック リスト」にありますので、細かい点はそちらでご確認ください。

アプリの名前を予約する

アプリの名前は一意でなければならず、すでにWindowsストアに登録されている名前は使用できません。また、まだアプリが登録されていなくても、予約されている名前は使用できません。よって、名前を決めてからアプリを作成してしまうと、後になってその名前が使用できないことが分かって、大幅に作り直さなければならないという事態になる可能性もあります。

アプリの名前はアプリ提出時に登録しなくても、事前に予約することができます。予約は1年間有効で、予約してから1年以内にアプリを提出しないと無効になります。もしアプリの名前を誰でも思いつきそうなありがちなものにしたいのであれば、できるだけ早く予約したほうがよいでしょう。

アプリの名前は、他の言語用や、名前を変更する時などのために、複数登録することができます。

アプリの名前を予約するページは、Visual Studioのメニュー[プロジェクト]-[ストア]-[アプリケーション名の予約]で開くこともできます。

アプリをストアと関連付ける

アプリの名前を予約すると、Visual Studioで作成しているプロジェクトと関連付けることができるようになります。関連付けると、アプリケーションマニフェストの「パッケージ表示名」、「パッケージ名」、「発行者名」、「発行者表示名」が適切に設定されます。

ストアと関連付けるには、Visual Studioのメニュー[プロジェクト]-[ストア]-[アプリケーションをWindowsストアと関連付ける]を選択します。すると予約した名前の一覧が表示されますので、適当なものを選択して関連付けを行います。

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アプリケーションマニフェストを編集する

ここでアプリケーションマニフェストについて、簡単に説明しておきます。

アプリケーションマニフェストには、アプリの機能について適切な情報が記述されている必要があります。アプリケーションマニフェストを編集するには、Visual Studioのソリューションエクスプローラーで「Package.appxmanifest」をダブルクリックするか、メニューで[プロジェクト]-[ストア]-[アプリケーション マニフェストの編集]を選択します。すると、マニフェストがマニフェストデザイナーによって開かれます。

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ここで一番重要なのは、「機能」タブの、アプリケーションが使用する機能を指定する箇所でしょう。アプリがローカルコンピュータの特定の場所にあるファイルにアクセスしたり、インターネットにアクセスしたり、マイクやカメラを使ったりなどする場合は、ここでしっかり指定しておく必要があります。デフォルトでは、「インターネット(クライアント)」のみ指定されています。

私の場合はマニフェストで指定すべき機能はありませんでしたので、すべて未指定で大丈夫でしたが、複雑な機能を持ったアプリの場合はそうはいかないでしょう。

この設定について詳しくは「アプリ機能の宣言 (Metro スタイル アプリ)」をご覧ください。

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また、ロゴの設定も必要です。最低必要なのは、ロゴ、小さいロゴ、スプラッシュスクリーン、ストアロゴの4つです。これらの画像ファイルはデフォルトでAssetsフォルダ内に作成されていますので、これらを直接編集するのが手っ取り早いです。

それぞれの画像がどのような場所で表示されるかについては、「アプリの画像」で説明されています。

私のように絵心のない人にとってはロゴの作成は大変ですが、最悪、文字だけでも良いのではないでしょうか。私の場合は、PowerPointで作成しました。

マニフェストにある「背景色」の設定は、ロゴやスプラッシュスクリーンの背景色にもなりますので、ロゴにあった背景色を設定しておきます。また、「前景テキスト」は背景色にあったもの(濃いか薄いかだけしか指定できません)にします。

アプリケーションが回転機能に対応しているかの指定を行う箇所もあります。回転によってどのように表示されるかを確認するには、エミュレータを使うと簡単です。エミュレータについては、後述します。

マニフェストの設定の詳細については、「マニフェスト デザイナー」をご覧ください。

エミュレータで確認する

エミュレータを使用すると、タブレットPCがなくても、機能を簡単に確認することができます。

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エミュレータで動作を確認するには、Visual Studioのツールバーにあるデバッグ開始ボタン(緑の三角のボタン)の右の下矢印をクリックして、ドロップダウンリストから「エミュレータ」を選択してから、デバッグを開始します。

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エミュレータでできることは、様々なタッチ(基本タッチ、縮小/拡大タッチ、回転タッチ)、回転、解像度の変更、場所の設定、スクリーンショットの撮影です。縮小/拡大タッチと回転タッチは、これらのモードにしてから、マウスの左ボタンとホイールで操作します。

スクリーンショットは後で必要になりますので、1366x768または768x1366ピクセル以上の解像度にして、少なくとも1枚は撮影しておいてください。

販売の詳しい情報を決める

再び「アプリを提出する」ページの工程に戻ります。

「販売の詳しい情報」には、アプリの価格や、市場、リリース日、アプリのカテゴリ、ハードウェア要件などを入力します。

アプリの価格は、ドロップダウンリストを使って、無料あるいは120〜77,500JPYの中から選択します。私のアプリは無料なので簡単ですが、有料の場合は、税金のことなど、面倒な設定が色々必要みたいです。

アプリが有料の場合は、アプリのお試し期間も入力する必要があります。お試し期間は、ドロップダウンリストで、「お試し版なし」「有効期間なし」「1日」「7日」「15日」「30日」の中から選択します。

「市場」では、ストアにアプリを掲載する国を選択します。たくさんの国がリストにありますが、私の場合はとりあえず日本だけにしました。

「リリース日」には、「認定後すぐにリリース」の他に、具体的な日にちを指定することもできます。

Windowsストアには色々なカテゴリがありますが、登録するアプリがどのカテゴリに属するかを決めなければなりません。カテゴリによっては、サブカテゴリもあります。私が登録した「ユーティリティ」のカテゴリには、サブカテゴリがありませんでした。

「ハードウェア要件」では、「DirectX の最小機能レベル」、「システムの最小 RAM 容量」(2GB以上が必要か)、「アクセシビリティガイドライン」に対応しているかを入力します。

高度な機能を設定する

「高度な機能」では、「プッシュ通知と Live Connect サービス」と「アプリ内販売」の設定を行います。今回の私の単純なアプリには無縁でしたので、これらの詳細は不明です。

年齢区分と評価証明書を指定する

「年齢区分と評価証明書」では、アプリが対象にしているユーザーの年齢を決めます。「3 歳以上の幼い子供が対象」「7 歳以上対象」「12 歳以上対象」「16 歳以上対象」の中から選びます。

私は3歳以上を選びましたが、3歳以上、7歳以上は、アプリの対象が子供の場合のみ選択することを勧めると書かれています。これらを選択するためには厳しい制限があり、表現の問題以外に、オンラインサービスへのアクセス、個人情報の収集、マイクやWebカメラなどのハードウェアの起動などもできません。

特にゲームの場合だと思いますが、販売する場所によっては、追加の評価情報や評価証明書が必要になります。証明書の提出もここで行います。

なお成人のみを対象としたアプリはWindowsストアに登録できないそうです。

暗号化を使用しているか確認する

「暗号化」では、アプリが暗号化を使用しているか、輸出規制に違反していないかを確認します。

ここには「このアプリが、政府機関による校閲、承認、ライセンス、またはテクノロジベースの制限を受けずに、すべての管轄地に広く配布可能であることを確認しました。」という項目があります。この意味を理解するのは難しいですが、この項目にチェックを入れないと、アプリの提出はできません。「暗号化に関する輸出制限の順守」を読んで、問題がないことを確認します。

パッケージを作成する

ここまできて、ようやくパッケージをアップロードできるようになります。まだパッケージが作成されていないのであれば、早速作成しましょう。

パッケージを作成するには、Visual Studioのメニューで、[プロジェクト]-[ストア]-[アプリパッケージの作成]を選択します。

出力場所、バージョン、アーキテクチャとソリューション構成、パブリックシンボルファイルを含めるかの設定を行えば、パッケージを作成できます。

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パッケージを作成した後、Windowsアプリ認定キットを起動して、アプリがストアの要件を満たしているか検証します。検証には少し時間がかかり、その間アプリが数回起動しますが、じっと待ちます。検証が終了し、「合格」と表示されれば、一安心です。

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パッケージをアップロードする

「アップロード」ページの指定箇所に、エクスプローラーからパッケージをドラッグ&ドロップすれば、アップロードすることができます。アップロードするファイルは、パッケージを作成したときに指定した出力場所(デフォルトでは、プロジェクトフォルダ内のAppPackagesフォルダ)にできる「.appxupload」という拡張子のファイルです。

アプリの説明を書く

アプリがWindowsストアに公開された時、そのアプリを紹介するページ(例えば、私が公開したアプリの場合は「Color Converter」)に表示される説明等を入力します。必須の項目は、「説明」、「著作権と商標の情報」、「スクリーンショット」、「サポートの問い合わせ先情報」です。

「説明」にはアプリの説明を10000文字以内で記述します。書式は指定できませんが、改行は有効です。

実際にWindowsストアで表示された説明文を見てみると、何もしなくても表示されるのは初めの3行(1行は全角で約68文字?)だけで、残りはその下に表示される「さらに詳しく」をクリックしないと表示されません。よって、重要な情報は初めの3行に収まるように書いた方がよさそうです。

「著作権と商標の情報」は、私の場合は、「Copyright © 2012, DOBON!」としました。

「スクリーンショット」は必ず1枚は必要で、8枚までアップロードできます。前述したように、エミュレータを使えば簡単に撮影できます。画像のサイズは1366x768または768x1366ピクセル以上で、2MB以下の.pngファイルである必要があります。

「サポートの問い合わせ先情報」には、メールアドレスか、URLを入力します。この情報は、アプリページの「アプリ サポート」のリンク先として使用されます。

必須の項目以外に、私の場合は、「アプリの機能」も入力しました。ここにはアプリの機能を箇条書きで入力します。これは、アプリページの「機能」に表示されます。

「アプリの説明」についてさらに詳しくは、「アプリの説明」をご覧ください。

なおアプリの説明は、登録後書き直すことができません。アプリを新しくリリースすれば、書き直せます。ちなみに新しくリリースする場合は、「更新の説明」も必須項目になります。

審査担当者へのコメント

アプリを審査する際に必要になる情報があれば、ここに記述します。例えば、アプリを使うときにユーザー名とパスワードが必要な場合などです。

アプリを提出する

以上の作業がすべて完了すると、アプリの提出が可能になります。覚悟を決めて、「認定を受けるために提出する」ボタンを押しましょう。

認定のステータスを確認する

アプリを提出すると、「アプリを提出する」ページの代わりに、「認定のステータス」が表示されるようになります。このページで、現在認定がどの段階に進んだかを確認することができます。

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認定のステータスには、以下のような段階があります。

  1. 前処理
    通常、1時間以内で完了します。
  2. セキュリティテスト
    通常、3時間以内で完了します。
  3. テクニカルコンプライアンス
    通常、6時間以内で完了します。
  4. コンテンツコンプライアンス
    通常、5日以内で完了します。
  5. リリース
    アプリが認定されるまで待ちます。
  6. 署名とパブリッシュ
    通常、4時間以内で完了します。

この説明からすると、提出してから登録されるまで長くても6日程度になりそうです。しかし私の場合は、アプリが単純なためか、提出したのが木曜日の夜(金曜日の朝)で、Windowsストアに公開されたのが土曜日の朝でしたので、1日で済みました。たぶん複雑なアプリの場合はもっと時間がかかるのでしょう。

アプリの認定が終了して、ストアに公開されると、メールで知らせてくれます。幸い私の場合は1回の提出で登録していただけましたので、認定されなかったときはどのようになるのかは分かりませんでした。

最後に

ごく簡単な説明しかできず申し訳ありませんが、0からWindowsストアにアプリを公開するまでの過程をなんとなくでも分かっていただけたら幸いです。私の作成したつまらないアプリでさえ登録できましたので、きっと誰でもできると思います。興味のある方は、ぜひ挑戦してみてください。

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